FX投資家待望の円安はいつか

QE3は回避の可能性が高い

2010年5月4日と5日、ギリシャ危機激化前夜に ドル/円は1ドル=94.99円のこの年の円の最安値をつけてドル安円高局面入りした。米連邦準備理事会(FRB)の出口政策論議は対欧州向け輸出の減速が先行しての景気懸念にかき消された。

 

そして、8月末のFRBのジャクソンホールでの年次シンポジウムでのバーナンキFRB議長の講演は量的緩和第2弾(QE2)に向けて大きく舵を切り、QE2実施直前の11月1日に80.21円まで円高が進んだ。今年になって3月17日に円か史上最高値の76.25円をつけたのは、東日本大震災と福島原発事故という思わぬリスク回避による円高が、為替証拠金のポジション調整で一時的に増幅されたためとみられている。

 

さて、2011年4月6日、ドル/円は1ドル=85.53円をつけ、今のところこれが円の年初来安値となっている。これはデジャ・ヴ、つまりいつか来た道なのだろうか。確かに、この数力月の米国経済指標は景気減速を示している。これは一時的な踊り場なのか、それとも長引くクロース・リセッションとなって、量的緩和第3弾(QE3)につながるのだろうか。

 

現時点では、米国景気減速は一時的なものにとどまり、いずれ景気が再び上向き、QE3に至らずにすむ可能性が高いとみられる。これは、景気減速が今春の原油価格高騰の余波と、日本の震災後のサプライチェーン障害によるところが大きいと考えられるからである。その後原油価格は反落し、日本の生産も正常化に向かいつつある。それならば、米国景気減速は長続きせず、QE3は不要なはずだ。したがって、ドル/円は米景気が再浮揚する秋以降、徐々にドル高円安基調を確立すると予想される。ただし、FRBの利上げは2012年9月頃までないとみられるため。ドル高円安は緩慢なペースにとどまらざるをえない。このシナリオの可能性は6割以上はあるだろう。

財政引き締めで景気後退懸念も

しかし、本当にあるいはいつ、米国景気が上向くかに不透明感も残る。景気後退に陥るには理由が必要である。米国経済はいまだ底離れに程遠い住宅市況等、まだ脆さがあるため、金融あるいは財政引き締め策には時期尚早である。そこで注意したいのは財政赤字削減交渉である。景気が自律的回復軌道に乗っていれば、小幅な財政引き締めを乗り切ることは可能かもしれない。しかし、時期尚早な財政引き締めが実施されれば、FRBとしては金融政策面からの景気下支えを続けざるをえなくなる可能性がある。

 

米国国内のポリシーミックス以外で、米国景気の下押しとなる要因はほとんどが海外から来る見込みである。たとえば原油高や、欧州あるいは金融引き締めが進んだ新興国の景気の失速等である。仮にQE3が実現するとなると、ドル/円はどうなるか。日米とも政策金利はゼロ金利同士である。米国FRBがQE3に動き、日銀が対抗策として資産買入れ枠の拡大に動かなければ、ドル安円高が進むだろう。ただし、昨年のQE2の例をみると、8月末のジャクソンホールのバーナンキFRB議長講演をきっかけに市場のQE2期待が盛り上がって米国利回り低下とドル安円高が進んだが、実際に11月3日にQE2が正式決定した後は、反動が出た。単なる利益確定の動きだけでなく、資産バブルや将来のインフレの芽につながるとの懸念も出て、米国利回りは上昇に転じた。このため、いつまでもドル安円高というわけにはいかなかった。

 

つまり、今後QE3に至る場合も、期待が盛り上がる段階で大幅ドル安円高となり、実施されれば自律反転する可能性が高いだろう。円高になっても、史上最高値の76.25円を超えて株安を伴ったパニック的円急騰にならなければ、介入の可能性は低いとみられる。それでも、日銀が対抗して資産買入れを拡大する可能性は十分あり、円高は抑えられよう。また、QE3の副作用の論客も黙ってはいないだろうし、QE3が投機マネーのリスク資産投資を助長するようであれば、円高とは相容れない。

外国為替市場(FX)では、欧州時間は、アジアの株式市場が頭の重たい値動きを演じたことからドル円やクロス円通貨も上値の限定された展開が先行したが、欧州株式市場が堅調に推移すると米国株式先物もこれに倣って上昇する展開になり、これを材料として市場ではリスク回避の巻き戻しの動きが徐々に強まった。ただし、月末要因によるポジション調整的な動きもありスイスフランが買い戻される展開になると、ユーロやポンドの動きは限定されることとなり、結果的に各通貨ともレンジ内での動意に終始することとなった。