欧州の債務問題と米財政問題

市場が注目した欧州の債務問題と米財政問題

市場の注目を最初に浴びたのは、欧州の債務問題だった国は、7月11日の財務相会合で、総額4400億ドルの欧州金融安定化基金(EFSF)の機能強化では合意したが、ギリシヤへの第2次支援の結論は持ち越した。解決策を見出
せずに時間稼ぎをしていると見破った市場では、危機のドミノ倒しが続いた。スペイン、イタリアのソブリンCDSが上昇し、10年物国債の利回りが危険水域の6%を超えてきた。

 

EU当局は7月21日、慌ててギリシヤの支援策をまとめ、発表した。イタリアの公的債務残高は1兆6000億7と米国、日本に次いで大きく、イタリアを救済するには5000億〜1兆ドルの融資と保証が必要になる。しかし、欧州中央銀行(ECB)にユーロ圏17力国の中銀を合わせたユー・ロシステムのバランスシートは1兆9000億?しかない。

 

スペインやイタリアの国債利回りの上昇は、フランスを中心に欧州各国の銀行システムにも甚大な影響を与える。EFSFの規模拡大、ユーロ圏共同債の導入、ユーロ圏の危機管理対策など抜本的な問題を積み残したなかで、欧州株は金融株を中心に下落を始めた。

 

次に市場の注目を浴びたのは、米国の財政問題だった。5月16日に政府総債務残高が法定上限の14兆2940億ドルに達し、米財務省は8月2日に法定上限引き上げ期限が到来すると警告した。しかし、民主党と共和党との調整協議は難航、期日前にようやく債務上限の引き上げと財政赤字削減策の枠組みが決まった。

 

世界同時株安の第1幕は、こうしてソブリンーリスクを背景に、欧州の金融株に先導されて始まったその根底にあるのは、2008年の100年に1度の危機がヽ未だに解決されていないことだ。世界大恐慌の再来を恐れたG20各国は、総額5兆ドルもの財政出動をした。08年の金融危機を契機に個人、企業、金融の民間部門が債務の圧縮を進め、景気の底割れを阻止するために公的部門が積極的な財政出動を続け、公的債務を膨張させたのだ。

 

財政赤字に追い打ちをかけたのが金融機関の救済だ。金融株の下落は、難病の患者を抱えながら、痛み止めの投与しかせず、病状はさらに悪化しているということを意味している。米国の債務上限の引き上げと財政赤字削減策の枠組みは決まったものの、財政赤字削減幅は当初目指していた4兆ドルから大幅に後退した。仮に2段階目の合意が形成されたとしても、財政赤字削減幅は合計2.5兆ドルにとどまり、財政問題に再び暗雲が立ち込めることになった。米格付け会社S&Pは、1941年に米国債を「AAA」に格付けし、その後70年間も維持してきた。しかし8月7日、米国債は格下げされた。

 

米国初の出来事で金融市場は混乱し、リスク回避の高まりから米国株に先導されて世界同時株安が再び始まった。格下げは、公的債務を圧縮せよとの警告だ。財政に期待できなければ頼みの綱は金融政策しかない。しかし、その金融政策もほとんど効果が期待できなくなってきた。

 

市場は、「ECBのスペインやイタリアの国債買い取りやFRBによる超低金利政策の時間軸効果は単に時間稼ぎをするだけであり、実質的には欧米の経済の弱さを象徴している。金融緩和競争が激化すると、あふれたマネーが新皿ハ国や商品市場に流れ込み、頼みの綱の新皿ハ国に制御不能なインフレと社会不安という副作用をもたらす」と理解した。8月18日に発表された米フゴフデルフイア連銀による8月の景気指数(フイーリー・指数)がマイナス30.7%と急低下、08年3月以来の低水準に落ち込んだことで、米景気の不確実性を感じていた市場は世界の需要が瞬間蒸発する現実に直面した。

 

参考:ユーロ暴落の背景

外国為替市場(FX)では、欧州時間は、アジアの株式市場が頭の重たい値動きを演じたことからドル円やクロス円通貨も上値の限定された展開が先行したが、欧州株式市場が堅調に推移すると米国株式先物もこれに倣って上昇する展開になり、これを材料として市場ではリスク回避の巻き戻しの動きが徐々に強まった。ただし、月末要因によるポジション調整的な動きもありスイスフランが買い戻される展開になると、ユーロやポンドの動きは限定されることとなり、結果的に各通貨ともレンジ内での動意に終始することとなった。